Summary
- 日本語 <=> 英語を対応させて意味を移すことに意味がない(それでは上達しない)
- 英単語の意味を日本語に翻訳して、ただそれだけをインプットしても使えるようにはならない(文脈を誤って使ってしまうだけ)
- 例えば、「恥ずかしい」=「
embarrassed
」=「shy
」という覚え方は NG. - 本来性格のことをいう「shy」を
I'm shy to find a hole in my sock
などと使ってしまうことに繋がる - 例:「瓶がぷかぷか浮かんだまま洞窟の中に入っていった」
- 🚫 NG:
A bottle entered the cave slowly floating.
(ただの直訳で違和感がある) - ✅ OK:
A bottle floated into the cave.
- 🚫 NG:
- 日本語 → 英語 と変換するのではなく、日本語 → 話の意図や背景を含めた理解に変換 → 適切な英語 を意識する
- そのために「スキーマ」の獲得が必要
- 違和感のない自然な英語を使うためには、外国語ネイティブの感覚を身に着ける必要がある
- 関連知識と一緒にインプットしていく
- 人間の情報処理は目的思考的で必要のない情報には目を向けない
- 視界には入っていても、見えてはいないということがあるように、英語を学習しようとするときにも同じことが起こっている
Note
1. 認知の仕組みから学習方法を見直そう
- They looked, but didn’t see it.
- 「英語ができるようになりたい」はどのレベルのことを言っているのか?最終目標によってやり方は変わってくる
- 本書は主に、仕事の場でのアウトプットできるレベル、すなわち自分の考えを的確・効果的に表現し、相手に伝えられるレベルの英語力を目指す人に向けて書かれている。
2. 知っていると使えるは別
- 理屈を理解しても、それを適切に使う力を別途磨いていかないとアウトプットできるようにはならない
- 可算名詞・不可算名詞は、その文脈で「数えることに意味がないかたまり」としてみたいか「一つ一つ個別の個体」としてみたいかによって変わる
- スキーマ
- ヘンだとわかる感覚。ほとんど言語化できず、無意識にアクセスされる
- なぜ日本人は加算不可算を間違えるのか。名詞の形態に自動的に注意を向けるスキーマを持っていないから(数えられるかどうかという観点で必ず名詞を分類する文法を持たない)。名詞の意味ばかりに気を取られる。かつ、加算不可算を日本語のスキーマで勝手に解釈してしまう
- 定冠詞、不定冠詞がネイティブに与える印象の違い
- Did you see the broken headlight? (the は壊れたヘッドライトがあったでしょ、みた?というニュアンスになる)
- Did you see a broken headlight?
3. 氷山の表面下の知識
- 共起の知識(一緒に使われる単語
- 文脈と頻度(どのくらいフォーマルな感じを与えるか
- 多義性があると認識することが大事
- 「許す」は英語で沢山の単語がある、逆に「tired」は日本語で疲れる、飽きるという意味
- 類義語
アウトプットのために必要な6つの要素
- ①その単語が使われる構文
- ②その単語が供起する単語
- ③その単語の頻度
- ④その単語の使われる文脈(フォーマリティの情報を含む)
- ⑤その単語の多義の構造(単語の意味の広がり)
- ⑥その単語の属する概念の意味ネットワークの知識
4. 日本語と英語のスキーマのズレ
- 自分の母語のスキーマが外国語のことばの意味や文法的な使い方に影響を与えている
- 英語は動作の様態(動き方)を主動詞で表し、移動の方向は動詞以外(前置詞)で表現する。日本語は動作の方向性も動詞で表し、動きの様子は副詞句で表す。方向性を前置詞で表すという発想を阻害してしまう。
- JP: A bottle entered the cave, slowly floating.
- EN: A bottle floated into the cave.
- 英語は状態と動作を明確に区別するが、日本語は曖昧である
- 「彼女は赤いドレスを着ている」
- She is wearing a red dress. (身に付けている状態) / She is putting on a red dress. (身に付けている動作)
- 人は注意を向けない情報を取り込めない・記憶もできない、そしてスキーマは注意を向ける情報を選択する
- 構文の誤った当てはめ、使用範囲の誤った当てはめ
英語スキーマを身につけるためのステップ
- ①自分が日本語スキーマを無意識に英語に当てはめていることを認識する
- ②英語の単語の意味を文脈かr考え、さらにコーパスで単語の意味範囲を調べて、日本語で対応する単語の意味範囲や構文と比較する
- ③日本語と英語の単語の意味範囲や構文を比較することにより日本語スキーマと食い違う英語独自のスキーマを探すことを試みる
- ④スキーマのズレを意識しながらアウトプットの練習をする。構文のズレと単語の意味範囲のズレを両方意識し、英語のスキーマを自分で探索する
- ⑤英語のスキーマを意識しながらアウトプットの練習を続ける
5.,6. コーパスによる英語スキーマ探索法
- 英英辞書を使う
- SkeLL ⭐️
- 似ている単語を調べる。大体文型が似てくる
- そして違いを理解する
- embarrassed と shy は全然違う使われ方をする(ある状況に反応して現れる気持ちと、性格の違い)
7. 多聴では伸びないリスニングの力
- 学習法としていきなり TOEIC のリスニング対策をやり始めるのは効果的でない。いきなり文脈も背景知識もない音声だけを聞いて理解するという状況は無理やりであり、スキーマを活かすことができない。
- リスニングに時間を使うより、語彙やその分野のスキーマ獲得に時間を使った方がいい
- 情報処理ができない音を何度繰り返し聴いてもまったく意味がない
- 表情や文脈情報が耳から聞こえる音よりも大事
- ①語彙を増やす
- ②スキーマを使う
- ③マルチモーダルな情報を手がかりにする
8. 語彙を育てる熟読・熟見法
- 予測→確認を繰り返すと情報処理が深くなり記憶に定着しやすい
- 実際には聴こえない単語も含めて、話し手が心の中で発話した英文を、自分で行間を埋めて復元する作業が効果的
- はじめは字幕を見ずに想像しながら見る → 字幕で理解するまで確認する(予測と違ったとき、より深く理解できる)
9. スピーキングとライティングの力をつける
- 英語は先生に教えられたことを暗記するもの、という意識で学習している限り、伝えたいことを自在にアウトプットができる本当の英語力は身につかない
- 悪いクセは、意識して注意を向けないと絶対に直らない
- 言いたいことを英語の発想で英語で言えるようにすることが大事
- 複数の可能な言い方を考えた上で、最も簡潔なものを選ぶ
- 日本語は名詞が主体、英語は動詞と前置詞が主体。動詞で考える思考が必要
10. 大人になってからでも遅すぎない
- 子供のときに慣れ親しむ内容は所詮子供の語彙に限られる
- 子供に「深い話」はできない
- 日本語が堪能な外国人は、幼少のころから日本語をやっていたのか?=否
- 大人は膨大な知識と関連付けて習得することができる
- 語彙とトピックのスキーマがあれば多少聞き取れなくても問題はない。それよりは、自分の意見を理解してもらえる文書がかけるか、話ができるかということである。文法や語彙の誤りは直してもらえるが、伝え方はそうではない。